Return of the Obra Dinn

とあるゲーム実況動画でやっているのを見かけ、
このゲームの中身が気になりその実況者さんより先に解きたくて購入。
モノクロの映像・音楽・ほどよい謎解き具合と、とても素晴らしいゲームでした。

推理ゲームではありますが、所謂本格ミステリーや推理ADVとは違い「プレイヤーを騙す仕掛け」はありません。
手に入れた情報はすべてそのまま正しいものとして扱えますし、当てずっぽうも許されます。
というか、そうでもないと回答できない局面もあります。

「なんか偉そうな帽子被ってるな」「一緒に行動してるから知り合い同士に違いない」
「急に居なくなってるから多分死んでる」「わざわざ喋ってるくらいだから確定情報」
「恰好・立ち振る舞いからしてこの役職に違いない」「服や名前から出身国を想像する」
そういう直感はだいたい正しいと思って大丈夫です。

主人公は名探偵ではなく保険調査員ですので、何も問題ナシです。

ノーヒントで完全クリアするのはだいぶ難しいと思います。
3人の安否が合っているごとに確定演出入るので、確定2人とわからない人1人で総当たりすれば当たってしまいます。
それをしなくても観察すればわかる部分もあると思うので、こだわりたい方は確証が持てるまで頑張りましょう。
ネタバレにならない程度の軽いヒントを以下に記載しておきます。（一応隠しておきます）
服装によって役職が絞れる。行動によって役職や関係がわかる。役職はわかるが名前がわからない場合は役職のとこにある不明を選ぶ。ハンモックは寝るとき以外はしまってある。死因はある程度融通が利く。

面白い。気になった人は、ネタバレなしで一度やってみてほしい。
ある程度開放したところで「これ以上無理じゃね？」ってなったあとに、何度も手帳とにらめっこして少しずつ解けていく快感。すべてに納得いくヒントが用意されてるんだけど、例えばこれ絶対あってるっていう回答を二個見つけた後に、残りの中国人の名前をロールで当てる、みたいなある程度の力技をも許容されているのがいい。
あととにかくリアリティのある描写がすごい。静止画でしか見れないのに、これまでの人生や性格、それぞれの人間関係まで浮かび上がってくるようになってる。ゲームというより小説に近い物語性を感じた。

本当に素晴らしいゲームです。こんなに面白い推理ゲームは他にない。
2018年にリリースしたゲームなのに、今までやっていなかった時間が勿体ないとすら感じました。
目に見えるもの、声、全ての情報が繋がっていく成功体験の連続で脳が気持ちよくなります。
人・動物の死という苦手な人は苦手な要素がありますが、少しでも気になった方はぜひプレイしましょう。

推理という言葉で船で起きた事件の真相と犯人を推理ゲーム…と誤解してしまいますが、
やることは、船で起きた事件のダイジェストを見たのちに、登場人物の名簿と睨めっこしながら、
だれが名簿の人物かを埋めていくゲームです。
このゲームは推理ゲームというより、推論。正しくは論理パズルゲームです。
名前を呼ばれた人は簡単に名簿から人物が特定、
役職名で呼ばれる人は、船長など役職によっては１人なのでこれも簡単に特定、
複数いる場合は、人種等他の情報で候補を絞り込んで…という流れです。
小粒で面白かったんですが、推理と言われると思っていたゲームと違いました。
船内をいちいち回って該当シーンを再生するのは大変なので、本から直接シーン再生できればと、
初回シーン再生が一定時間強制表示じゃなければもっと良かった感じです。

このゲーム、大量の外国人の死因と名前を一致させるなんてほとんど不可能に見えますが、意外と簡単です。全体のクリア実績率44%(!!)が証拠です。
私は本を何冊読んでも「考える」がわからないおばかさんだったのですが、このゲームを使って自分の頭で考えるということがどういうことなのか少しわかった気がします。生まれつきの頭の良さはそんなに関係なくて、方法と慣れがあるだけなんだと感じました。
以下自分のための覚え書きです。
1.論理的思考の問題は、逆に言えば論理だけで解決できる。よく観察して、分解して、一つずつ手順を踏んでいけば誰でもいつか必ず終わる。絡まったイヤホンみたいにめんどくさいだけ。
2.人間は心で動くので、見たいものしか見えない。考えたいことしか考えない。意味がないと思っているものは見えなくなるし、考えるのが面倒だと感じたことは考えられなくなる。見えなければもっと、無心に穴が開くほど見る。
3.第一印象で無理だと思ったことでも、意外と何とかなる。自分のレベルは今すぐ上がらないけど、問題のレベルを下げたり、小さくすることはできる。高い壁があると意識したら思考停止する。
4.頭の中で考えて解決するよりも、目で見えて解決することの方が多い。

60人ほどの登場人物が顔・役職・国籍をそれぞれ固有に持って登場し、彼らの行動と死因を追って船の過去を三人称視点で追体験するゲーム。
ゲームデザインがとにかく巧で、最初は小さなバラバラのピースを集めていき、そして最終的には全体の物語が記憶に刷り込まれるように、ゲーム全体の体験が設計されている。例えば、船内のワープ機能などは無く歩く速度もゆっくり目になっていることで、逆にプレーヤーは時間を持て余し周りをよく見てよく考えざるを得ない。たとえば、細かいヒントが慎重に隠されており、それらを章を跨いで繋げることで初めて答えになるのだが、そこには自分のアイデアが繋がることの喜びがある。たとえば、ヒントが無い（本当に無いこともある！）ので仮説を自分で立てて進めていき、それがハマる快感がある。
体験としては、物語に没頭して自分ごととして同化していく感じが、謎解き系のTRPGに近いかと思います。