Moons of Madness
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A mysterious signal has been recorded coming from the red planet. The message confounded Orochi scientists. Their analysts broke it down and determined it was of intelligent origin. Orochi management immediately concluded that the discovery was too sensitive for public knowledge and moved to keep it hidden. In secret, the corporation began construction of Trailblazer Alpha, a state-of-the-art Mars research outpost designed to identify the true nature of the message. You are Shane Newehart, an engineer stationed at Trailblazer Alpha and your security clearance means you are completely unaware of the existence of the mysterious signal. Your job is simply to keep the lights on until the transport ship Cyrano arrives bringing with it a new team to take over your duties. Soon you discover strange and unusual setbacks. Crucial systems are malfunctioning, the greenhouse is filled with a strange mist and the rest of your team has yet to return from their EVA mission. Things are starting to fall apart. You begin seeing and hearing things that aren’t there. Visions, hallucinations – or is that even what it is? Is this real… or are you slowly descending into madness?
Steam User 1
「赤い砂漠で、正気は蝕まれる。――火星の科学施設を襲う、ラヴクラフト的『狂気』の浸食」
ストーリー
火星の孤立した前線科学研究基地「インビクタス」。
ただの設備技術者であるシェーン・ニューハートは、交代クルーが到着するまでの退屈な空白期間、施設を維持するための日常的な保守点検ルーチンを淡々とこなしていた。
しかし、些細な電力障害やシステムエラーと思われた異常は、やがて視界を侵食する禍々しい幻覚と、物理法則をあざ笑う不可解な超常現象へと姿を変えていく。
火星の地下深淵に封印されていた太古の「何か」が長い眠りから覚醒したとき、シェーンは己の暗い過去のトラウマと、この赤い惑星が秘めていた名状しがたい狂気の真実に直面することになる。
概要
本作は、H.P.ラヴクラフトのクトゥルフ神話大系とハードSFの意匠を融合させた、一人称視点(FPP)のコズミック・サイコホラー・アドベンチャー『Moons of Madness』だ。
開発元Rock Pocket Gamesが手掛けたオンラインRPG『The Secret World』と同一の宇宙設定(オカルト伝奇ユニバース)を共有しているが、予備知識を一切必要とせず、本作単体で完結した物語として楽しめる。
プレイヤーは火星基地の各棟を探索し、ソーラーパネルの接続復旧や浸水隔壁の排水といった設備工学タスクをこなす傍ら、正気と狂気の境界が曖昧になっていく施設内を彷徨い、忍び寄る異形の脅威から生き延びる道を模索していく。
感想
息を呑むハードSF火星観光と、濃厚なコズミック・ホラーの美学
まず惜しみない賛辞を贈るべきは、その圧倒的な美術構築とアトモスフィアの完成度だ。
Unreal Engine 4によって精緻に描かれたインビクタス基地は、無骨ながら洗練されたモジュール構造や気密エアロックの重厚な金属感など、ハードSFファンが求める「宇宙ステーションの機能美」を余すところなく体現している。減圧ハッチを抜けた先に広がる見渡す限りの赤錆びた大地、沈黙する探査車、そして人工温室ドームに立ち込める異様な静謐。
ただヘルメット越しに重い呼吸音を聞きながら歩き回っているだけでも、「地球から数億キロ離れた絶対の孤独」と「冷たい宇宙的恐怖」が心地よく肌を粟立たせてくれる。SFホラーの舞台装置としては、文句なしに満点級のクオリティを誇る。
雑用と鬼ごっこが殺ぐ緊迫感――噛み合わないゲームデザインの悲哀
しかし、その極上の没入感を支えるべきゲームプレイに目を向けると、評価の針は急速に鈍い溜息へと傾いてしまう。
プレイヤーが作中で課される主たるアクションは、驚くほど生々しい「基地の修繕バイト(お使いタスク)」の反復だ。
「A地点へ向かってレバーを引け」「基盤を直すためにB地点から予備パーツを運んでこい」といった導線の往復に終始し、合間に挟まるパズルも解法が直感的すぎて知的な達成感は薄い。
さらにテンポを致命的に悪化させているのが、中盤以降に唐突にねじ込まれる「クリーチャーからの逃走劇(強制チェイス・ステルスパート)」だ。
知恵を絞った対抗策やリソース管理の緊張感はなく、狭い通路で敵の突進を避けて所定のチェックポイントへ駆け込むだけの前時代的な「死に覚えの鬼ごっこ」を強要される。そこにあるのは得体の知れない宇宙的脅威への畏怖ではなく、単に進行を遮られることに対する冷めた苛立ちでしかない。
これほど美麗な環境美術と生理的嫌悪を誘う幻覚演出を揃えていたのであれば、中途半端なアクションや作業パズルでプレイ時間を引き伸ばすのではなく、狂気の心理変容と世界観の語りに全振りした「純度の高いウォーキングシミュレーター」として割り切るべきだったのではないか――そう悔やまれてならないほど、素材の良さと骨組みの不協和音が際立っている。
総評
ゲームメカニクスとしての深みやアクションの洗練度を期待すると、単調なお使いと大味なチェイスに肩透かしを食らうことは避けられない。しかし、ハードSFの冷徹な鋼鉄とラヴクラフト的な有機的狂気が徐々に混ざり合っていく絵作りの美しさは一見の価値がある。「火星を舞台にした良質なコズミック・ホラー短編小説を、極上のCGセットで読み進める」というアプローチで臨むならば、数時間のトリップとして十分に記憶に残る一本である。
火星に眠る脅威(ネタバレ)
触手の怪物とドリーム・ウィーバー(Dreamweaver)
物語の中盤以降、機能的だったはずのハイテク基地は、物理法則を蹂躙するように繁茂する不吉な黒い触手と、脈打つ有機的な異界植物によって無残に侵食されていく。
シェーンを脅かすものの正体は、火星の土着クリーチャーなどではなく、精神世界「夢の領域」を通じて人類の意識へ侵食してくる高次元の暗黒存在(旧支配者の眷属)の影響だ。
現実の計器が狂い、幼少期のトラウマが投影された生々しい悪夢のビジョンと基地の廊下がシームレスに交錯する幻覚演出は実に見事だが、終盤の展開は駆け足気味に畳み込まれ、シェーン自身には能動的な打開策も運命への抵抗手段も与えられない。ただただ受動的に逃げ惑う結末の淡白さは、壮大に広げたコズミック・ホラーの風呂敷に対して、ややカタルシスの不足を感じさせてしまう。
レビュー要約
・機能美あふれる火星基地の内部や荒涼たる赤色砂漠など、現行基準でも息を呑むほど美しいグラフィックとSFホラー美術。
・ハードSFの厳密な考証と、クトゥルフ神話特有の湿っぽい狂気の侵食を融合させた魅力的な世界観設定。
・現実と悪夢がシームレスに混ざり合う、精神的狂気を視覚化した巧みなホラー演出。
・目的地をただ往復してスイッチを押すだけのお使いタスクが大半を占め、ゲームプレイに強い作業感が生じている点。
・パズルの難易度が低く工夫に乏しい上、クリーチャーとのチェイスパートが大味な死に覚えに終始し、ホラーの緊張感を削いでいる点。
・世界観や美術が突出して優れている反面、アクションやパズル要素の完成度が中途半端で、純粋なウォーキングシムになりきれなかった構成のちぐはぐさ。